いわゆる夢小説。しかし名前変換が無い。そしてファンタジー。
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昼間に選んだドレスを身に纏い、髪を纏め上げられ、軽くお化粧までされてしまった私は、出来栄えに十分満足していた。
特別すっごい美人、というわけではないが、それでもフォーマルな場に立てる程度には小奇麗にしてもらえた。
ドレスのおかげもあってか、桜乃など「お綺麗です、女神様……!」と涙を流しているし、女神様呼称に戻っている。
朋香は朋香で「本当にお綺麗です!」と興奮した様子だ。
いやだな、照れるなぁとにやつきつつ、それにしてもと首を傾げる。
榊様は夕刻の鐘が鳴ったら迎えに来ると言っていたはずなのに、もう30分ほど前にその鐘は鳴ってしまった。
それなのにまだ来ないとは、いったいどういうことだと不思議に思いつつソファに腰掛ける。
仕方ないし、とりあえず本でも読んでいるか、と読みかけの本に手を伸ばしたとき、細く高い悲鳴が廊下で上がった。
明らかに女性の悲鳴だろうそれは、転んだときなんかに出るようなものではなくて、何かとんでもなく恐ろしいものに遭遇したとき―――たとえば幽霊とか―――の声のようで、私たち3人は思わず顔を見合わせた。
しかも、次いで男性2人分の怒声と、ばたばたと騒がしい足音が聞こえる。その足音はこちらに向かってきていて、私たちは更にぎょっとした。
そうして、ばん!と戸が叩かれるのと、キイン、と高い金属音が響くのは同時のことだった。
「助けて!」
切羽詰ったその声には聞き覚えがある。レディローズのものだ。
「お願い、助けて!」と二度目の声が上がる間に、おそらく彼女の騎士だろう男性が“誰か”と剣を打ち合いながら、「何のためにヨル狩りなど!」と怒声を上げる。
ヨル狩り―――その単語に、私は思わず息を呑んだ。
桜乃の顔色がさあっと青くなり、朋香はひっと喉を引き攣らせる。
対する相手の返答は無く、ただ高い金属音を上げて剣を打ち合う音だけが聞こえる。
レディローズはこちらに向かって再び「どうか!」と悲鳴のような声を上げた。
その悲鳴に、何かを考えるより、体が先に動いた。ばんとドアを開き、肺いっぱいに息を吸う。
そうして、今まさにレディローズに向かって剣を振り上げた悪漢に向けて、“言葉”をあらん限りの声でぶつけた。
「剣を捨てろ!」
“言葉”は力となって、全身黒尽くめの悪漢―――って、ちょっと、黒は王族とヨルにのみ許された色じゃなかったっけ?―――の手から剣を弾き飛ばす。
突然現れた第三者に、助けを求めていたはずのレディローズもお付の騎士も目を見開いていたが、一番驚いたのは剣を手から落とされた悪漢だった。
しかし正気に戻るのが一番早かったのもその男で、何か一言二言を呟くと、待てと止める間もなく消え失せてしまう。
ダイヤモンドパレスと違い、王宮にはほとんどの魔術に制御が掛かっていないせいで、その男は一瞬の間に姿を消してしまった。
いや、でも、いくら制御なしといえど、移動系の魔術なんてこんなに簡単に使えるものじゃないはずだ。魔法陣があればまだ比較的容易に使えるかもしれないけれど、そんなものも無いし。
でも姿を透明化するなんて魔術は今のところ無いはずだし……あっ、でも待てよ。この前榊様からもらった指輪みたいに、装飾品を使えば魔術を発動させるための魔力を溜めておけるし、言葉の短縮もできたはずだ。ということはやっぱり移動系の魔術か?なんてことをつらつらと考えていると、「女神様―!」と桜乃が飛んできた。
そうしてからぱたぱたぱたぱたと私の体を触り、「お怪我は!」と蒼白になりながら叫ぶ。
「無い」と一言で告げると、桜乃は「良かったですー」と床に座り込んでしまった。
朋香は朋香で「お一人で前に出ないでください!私も桜乃も女神様ほどではありませんがそこそこの魔術は使えます!」と真っ青になりながら叱りつけてくる。
その二人に「大丈夫大丈夫」とぷらぷら手を振って、こちらを見つめたまま茫然としているレディローズに手を差し出した。
「怪我はないですか?」
「―――め、女神様……?」
そういえばこちらの世界で実体化してしまってから初めて見たレディローズは、そう呟いてから、気を失ってぱたりと倒れた。
……そういえばこの前教会で会ったときも最後は気を失われたような気がする、と私はまだこの世界が夢の世界だったときのことを思い出し、こっそりため息を吐いた。
特別すっごい美人、というわけではないが、それでもフォーマルな場に立てる程度には小奇麗にしてもらえた。
ドレスのおかげもあってか、桜乃など「お綺麗です、女神様……!」と涙を流しているし、女神様呼称に戻っている。
朋香は朋香で「本当にお綺麗です!」と興奮した様子だ。
いやだな、照れるなぁとにやつきつつ、それにしてもと首を傾げる。
榊様は夕刻の鐘が鳴ったら迎えに来ると言っていたはずなのに、もう30分ほど前にその鐘は鳴ってしまった。
それなのにまだ来ないとは、いったいどういうことだと不思議に思いつつソファに腰掛ける。
仕方ないし、とりあえず本でも読んでいるか、と読みかけの本に手を伸ばしたとき、細く高い悲鳴が廊下で上がった。
明らかに女性の悲鳴だろうそれは、転んだときなんかに出るようなものではなくて、何かとんでもなく恐ろしいものに遭遇したとき―――たとえば幽霊とか―――の声のようで、私たち3人は思わず顔を見合わせた。
しかも、次いで男性2人分の怒声と、ばたばたと騒がしい足音が聞こえる。その足音はこちらに向かってきていて、私たちは更にぎょっとした。
そうして、ばん!と戸が叩かれるのと、キイン、と高い金属音が響くのは同時のことだった。
「助けて!」
切羽詰ったその声には聞き覚えがある。レディローズのものだ。
「お願い、助けて!」と二度目の声が上がる間に、おそらく彼女の騎士だろう男性が“誰か”と剣を打ち合いながら、「何のためにヨル狩りなど!」と怒声を上げる。
ヨル狩り―――その単語に、私は思わず息を呑んだ。
桜乃の顔色がさあっと青くなり、朋香はひっと喉を引き攣らせる。
対する相手の返答は無く、ただ高い金属音を上げて剣を打ち合う音だけが聞こえる。
レディローズはこちらに向かって再び「どうか!」と悲鳴のような声を上げた。
その悲鳴に、何かを考えるより、体が先に動いた。ばんとドアを開き、肺いっぱいに息を吸う。
そうして、今まさにレディローズに向かって剣を振り上げた悪漢に向けて、“言葉”をあらん限りの声でぶつけた。
「剣を捨てろ!」
“言葉”は力となって、全身黒尽くめの悪漢―――って、ちょっと、黒は王族とヨルにのみ許された色じゃなかったっけ?―――の手から剣を弾き飛ばす。
突然現れた第三者に、助けを求めていたはずのレディローズもお付の騎士も目を見開いていたが、一番驚いたのは剣を手から落とされた悪漢だった。
しかし正気に戻るのが一番早かったのもその男で、何か一言二言を呟くと、待てと止める間もなく消え失せてしまう。
ダイヤモンドパレスと違い、王宮にはほとんどの魔術に制御が掛かっていないせいで、その男は一瞬の間に姿を消してしまった。
いや、でも、いくら制御なしといえど、移動系の魔術なんてこんなに簡単に使えるものじゃないはずだ。魔法陣があればまだ比較的容易に使えるかもしれないけれど、そんなものも無いし。
でも姿を透明化するなんて魔術は今のところ無いはずだし……あっ、でも待てよ。この前榊様からもらった指輪みたいに、装飾品を使えば魔術を発動させるための魔力を溜めておけるし、言葉の短縮もできたはずだ。ということはやっぱり移動系の魔術か?なんてことをつらつらと考えていると、「女神様―!」と桜乃が飛んできた。
そうしてからぱたぱたぱたぱたと私の体を触り、「お怪我は!」と蒼白になりながら叫ぶ。
「無い」と一言で告げると、桜乃は「良かったですー」と床に座り込んでしまった。
朋香は朋香で「お一人で前に出ないでください!私も桜乃も女神様ほどではありませんがそこそこの魔術は使えます!」と真っ青になりながら叱りつけてくる。
その二人に「大丈夫大丈夫」とぷらぷら手を振って、こちらを見つめたまま茫然としているレディローズに手を差し出した。
「怪我はないですか?」
「―――め、女神様……?」
そういえばこちらの世界で実体化してしまってから初めて見たレディローズは、そう呟いてから、気を失ってぱたりと倒れた。
……そういえばこの前教会で会ったときも最後は気を失われたような気がする、と私はまだこの世界が夢の世界だったときのことを思い出し、こっそりため息を吐いた。
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